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株価の乱高下にもう疲れたあなたへ。2025年の新常識「守りの資産」としての債券ポートフォリオ術

2024年は、日経平均株価が史上最高値を幾度となく更新し、多くの投資家が市場の熱狂に沸いた一年でした。

しかし、その楽観的なムードは一転します。2025年に入ると、米国の関税政策を巡る有力者の発言が引き金となり、市場には急速に警戒感が広がりました。そして4月には相場が急落、一時31,000円台まで値を下げる展開となったのです。高値圏から10,000円近くも下落したことになり、一日で1,000円以上値が動く日も珍しくありません。

このような、昨日の利益が今日の損失に変わりかねない、先の読めないジェットコースターのような市場環境の中、ご自身の資産額の増減に一喜一憂し、心が休まらない日々を送っている方も少なくないのではないでしょうか。「このまま株式投資だけで将来は大丈夫だろうか」という漠然とした不安。その気持ち、痛いほどよくわかります。

しかし、もしその不安を和らげ、資産と心の両方に「安定」をもたらす方法があるとしたらどうでしょう。

この記事では、そんなあなたのために、今だからこそ知ってほしい「新しい常識」を解説します。それは、債券を単なる地味な投資先としてではなく、株価の乱高下からあなたの大切な資産を守るための戦略的な「守りの資産」として活用するポートフォリオ術です。攻めの株式投資と組み合わせることで、より心穏やかに、そして着実に未来の資産を築くための具体的な方法を、専門家の視点から丁寧にお伝えします。

CONTENTS

第1章:なぜ2025年の今、プロ投資家は「債券」に注目するのか

「債券」と聞くと、どこか古風で退屈なイメージを持つかもしれません。しかし、2025年の今、多くのプロ投資家がその価値を再認識し、ポートフォリオへの組み入れを強化しています。その理由は、現在の経済環境にこそ隠されています。

株式投資が企業の将来の成長性に期待して「値上がり益(キャピタルゲイン)」を狙うものであるのに対し、債券投資の本質は、国や企業にお金を貸すことで、約束された「利子収入(インカムゲイン)」を安定的に受け取ることにあります。この性質の違いが、不安定な市場において絶大な効果を発揮するのです。

特に、2025年現在の世界的な金利環境は、数年前の歴史的な低金利時代とは比較にならない水準にあります。これは、債券を保有しているだけで得られる利子収入、つまりインカムゲインの魅力が、過去10年以上にわたって最も高まっていることを意味します。

さらに、債券はポートフォリオ全体の「衝撃吸収材(ショックアブソーバー)」としての役割を果たします。株価が大きく下落するような局面では、安全資産とされる優良な債券には資金が逃避しやすく、価格が安定、あるいは上昇することさえあります。この異なる値動きが、資産全体の目減りを防ぎ、あなたの精神的な負担を大きく和らげてくれるのです。

参考)2020年3月の国内外の「株式型」や「債券型」「リート型」など、各種インデックスファンドの下落率を比較したもの

2020年の2月末から新型コロナウイルスの感染が拡大し、世界中で猛威を振るうようになったことから、国内外の金融商品の多くが大幅な値下がりとなった。その中で、債券系ファンドの下落率が低いことが分かる。

出典: ダイヤモンドザイ

第2章:これだけは知っておきたい、債券投資の3つの心臓部

ポートフォリオ術を学ぶ前に、債券の世界を理解するための最低限の知識を身につけましょう。ここでは専門用語を極力使わず、3つの重要なポイントに絞って解説します。

一つ目は満期(償還日)、すなわち「お金が戻ってくる約束の日」です。例えば「10年満期」の債券を1,000,000円分購入すれば、10年後にはその1,000,000円が戻ってくることが約束されています。これは「10年後に子供の大学の入学金として3,000,000円必要」といった、ライフプランに合わせた資金計画を立てる上で非常に強力な武器となります。

二つ目は利回り(クーポン)、これはお金を貸したお礼にもらえる「家賃収入」のようなものです。発行体は、満期まで定期的(例えば半年に一度)に、この「お礼」を支払ってくれます。銀行預金の金利よりも魅力的な利息が、あなたの資産を着実に育ててくれます。

そして三つ目が信用格付け、いわばお金を貸す相手の「信頼度スコア」です。格付け会社が国や企業の財務状況を評価し、AAA(トリプルエー)を最高としてランク付けしています。このスコアが高いほど、約束通りにお金が返ってくる可能性が高く安全ですが、その分「お礼」である利回りは控えめになります。逆にスコアが低い発行体は、リスクがある分、高い利回りを提示して投資家を惹きつけようとします。

債券の信用格付けと利回りの関係図

第3章:もう迷わない。年代・目的別「守りの債券ポートフォリオ」実践モデル

それでは、いよいよ本題である「守りの資産」の作り方です。

一般的に、投資の世界では資産配分の簡単な目安として「100-年齢」という法則が知られています。これは、100からご自身の年齢を引いた数字を、リスク資産である株式などに投資する割合の目安にするという考え方です。例えば40歳の方なら「100-40=60」で資産の60%を株式に、残りの40%を債券などの安定資産に配分します。年齢を重ねるにつれて、安定資産の割合を増やしていくという合理的なアプローチです。

この考え方を基本としつつ、ここでは具体的な年代やリスク許容度に応じた2つのモデルケースをご紹介します。

まず、どんなポートフォリオであれ、守りの基盤として最適なのが「個人向け国債(変動10年)」です。これは日本政府が個人向けに発行している債券で、最低金利が0.05%保証されており、半年ごとに金利が見直されるため、将来の金利上昇にも対応できます。何より、発行体が日本国であるという究極の安心感が魅力です。

この堅固な土台の上に、より高い利回りを求めて「米国債券」などを組み入れていきます。2025年現在、日本の金利に比べて米国の金利は高いため、米国債券に投資することでより多くのインカムゲインが期待できます。新NISAの「成長投資枠」を使えば、米国債券にまとめて投資できる投資信託やETF(上場投資信託)を、税金の優遇を受けながら手軽に購入できます。

● 30代・40代の「攻め7割・守り3割」バランス型ポートフォリオ

「100-年齢」の法則に照らせば、この年代は資産の60%~70%を株式などのリスク資産に振り向ける積極的な運用が考えられます。まだリスクを取って資産を大きく成長させる時期ですが、資産の3割程度を債券に配分することで、守りの力を手に入れることができます。例えば、資産の7割を株式の投資信託に、残りの3割を「個人向け国債」と「米国債券ETF」に半分ずつ投資します。こうすることで、株価の暴落時にもポートフォリオ全体の傷は浅くなり、精神的な余裕を持って積立投資を継続できるでしょう。守りがあるからこそ、攻め続けられるのです。

● 50代以降の「守り6割・攻め4割」安定重視型ポートフォリオ

退職が視野に入ってくるこの年代では、「100-年齢」の法則に従い、安定資産の比率を高めていくことが重要です。資産を「増やす」こと以上に「守り抜く」ことの重要性が増すため、ポートフォリオの過半数を債券に切り替え、資産の安定性を高めましょう。例えば、資産の6割を債券(個人向け国債、日米の優良社債ファンドなど)、残りの4割を株式に配分します。これにより、市場の混乱時にも資産価値の大きな変動を避けつつ、安定した利子収入を将来の生活費の一部として計算に入れることができます。

ポートフォリオ例

第4章:「安全」という言葉に潜む3つの罠。債券投資で失敗しないための鉄則

債券は安全な資産ですが、リスクがゼロというわけではありません。ここでは、初心者が陥りがちな3つの「罠」と、その回避策を知っておきましょう。

1. 金利変動の罠(価格変動リスク)

市場の金利が上昇すると、既発の低金利な債券の魅力が相対的に下がり、価格は下落します。これが有名な「金利と債券価格のシーソーの関係」です。ただし、これは途中で売却する場合の話。満期まで保有し続ければ、約束通り額面金額が戻ってきます。慌てて売らない「持ち切る力」が、この罠を回避する鍵です。

市場金利と債券価格
市場金利と債券価格

2. 発行体の倒産の罠(信用リスク)

非常に稀ではありますが、債券を発行した国や企業が財政破綻(デフォルト)する可能性はゼロではありません。この罠を避けるには、前述の「信用格付け」を必ず確認し、格付けの高い、信頼できる発行体の債券を選ぶことが鉄則です。特定の社債に集中投資するのではなく、複数の債券に分散された投資信託を活用するのも有効な回避策です。

3. 為替レートの罠(為替変動リスク)

米国債券など、外貨建ての債券に投資する際に発生する、日本人投資家特有のリスクです。例えば、1ドル=150円の時に投資しても、満期時に1ドル=130円といった円高になっていると、受け取る円の価値は目減りしてしまいます。このリスクを避けたい場合は、為替の影響を抑える「為替ヘッジあり」の投資信託を選ぶという選択肢もあります。

よくあるご質問(FAQ)

債券投資は、いくらから始められますか?

個人向け国債であれば10,000円から購入可能です。また、新NISAで投資できる債券の投資信託やETFであれば、証券会社によっては月々1,000円や100円といった少額からの積立も可能です。まとまった資金がなくても、気軽に始めることができます。

個別の債券を買うのと、投資信託やETFで買うのは、どちらが良いですか?

一長一短があります。個別の債券は、満期まで持てば額面金額が戻ってくる安心感があります。一方、投資信託やETFは、一つの商品で数十から数百の債券に分散投資できるため、一つの発行体が万が一倒産しても影響が限定的になるというメリットがあります。初心者の方は、まずは手軽に分散投資ができる投資信託やETFから検討するのが良いでしょう。

新NISAの「つみたて投資枠」で債券は買えますか?

個別の債券は「つみたて投資枠」の対象外です。しかし、金融庁が定めた基準をクリアした、手数料の低い一部の債券投資信託は「つみたて投資枠」の対象商品に含まれています。ご自身の証券会社のラインナップを確認してみてください。より多くの債券関連商品から選びたい場合は「成長投資枠」を活用することになります。

メキシコ債やトルコ債など、利回りが10%近い新興国の債券はどうですか?

非常に高い利回りは魅力的ですが、その裏には高いリスクが潜んでいることを理解する必要があります。新興国の債券は、国の財政や政治が不安定なことが多く、為替レートの変動も先進国に比べて非常に激しいです。デフォルト(債務不履行)のリスクも低くありません。ポートフォリオの大部分を占める「守りの資産」としては不適切であり、投資の仕組みを熟知した上級者が、資産のごく一部で楽しむ趣味の領域と考えるのが賢明です。

まとめ:今日からできる、心の平穏を取り戻すための第一歩

ここまで、株価の変動に疲れたあなたのための「守りの資産」としての債券ポートフォリオ術を解説してきました。

株式投資が資産を増やすための「アクセル」だとすれば、債券投資は資産を守り、安定させるための「ブレーキ」であり「サスペンション」です。両方をバランス良く搭載することで初めて、どんな道でも安心して走り続けられる、全天候型のポートフォリオが完成します。

この記事を読んで、「少し興味が湧いた」と感じていただけたなら、ぜひ今日からできる小さな一歩を踏み出してみてください。

それは、まずはお使いの証券会社のサイトにログインして、「個人向け国債」や「債券ファンド」のページをただ眺めてみる、ということでも構いません。

株価の数字に一喜一憂する日々から一歩踏み出し、あなたの大切な資産と心の平穏を取り戻す。そのための新しい常識が、債券投資にはあります。この記事が、そのきっかけとなれたなら幸いです。

※本記事の内容は、執筆時2025年7月のものです。最新情報は各機関や企業の公式サイトをご確認ください。

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