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「実家の親も高齢になってきたけど、今後どうすれば…」「自分たちの老後は、今の家で大丈夫だろうか?」
人生の大きな節目である50代を迎え、ご自身のキャリアや子育てが一段落したとき、ふと親の、そして自分自身の「これから」について、漠然とした不安を感じることはありませんか?
多くの方が「まだ先の話」と考えがちですが、実は50代の今こそ、将来の住まいについて考え始める絶好のタイミングなのです。
厚生労働省の発表によると、2024年の日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性87.13歳ですが、日常生活に制限なく健康的に生活できる期間を示す「健康寿命」は、男性72.57歳、女性75.45歳(2022年)となっています。
※出典:厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」「健康寿命の令和4年値について」
つまり、平均して約8年~12年間は、何らかのサポートを必要とする可能性があるのです。いざ介護が必要になってから慌てて住まいを探し始めると、情報不足や時間的制約から、本人や家族にとって最適な選択ができないケースが少なくありません。
この記事では、多様化する高齢者向け住まいの種類から、親、そして自分自身に合った「老後の住まい」を後悔なく見つけるための具体的なステップまで、網羅的に解説します。
一昔前まで、「高齢者の住まい」といえば自宅か特別養護老人ホーム(特養)くらいしか選択肢がありませんでした。しかし現在、高齢者のニーズの多様化に伴い、その選択肢は大きく広がっています。
まず、高齢者向け住まいは、入居者の「心身の状態」によって、大きく2つのタイプに分けられることを理解しておきましょう。
自分のことは自分でできるが、万が一の備えや家事の負担軽減を求める方向け。
24時間体制での見守りや手厚い介護サービスが必要な方向け。
この中でも特に近年急増しているのが、前者のアクティブシニア層を主な対象とした「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」です。国土交通省・厚生労働省の集計によると、制度が開始された2011年には全国でわずか約100棟だった登録棟数は、2025年9月時点で約8,300棟を超え、高齢者の住まいの有力な選択肢として定着しています。
※出典:一般社団法人 高齢者住宅協会「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム 登録状況(R7.8末時点)」
この背景には、「できる限り自立した生活を続けたい」という高齢者の思いに応える住まいの需要が高まっていることがあります。
それでは、具体的にどのような選択肢があるのでしょうか。ここでは代表的な6種類の住まいについて、それぞれの特徴、費用、メリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
自立した高齢者向けの賃貸住宅。安否確認と生活相談サービスが義務付けられています。介護が必要な場合は、外部の訪問介護サービスなどを利用します。
自立した生活を続けたいが、万が一の備えは欲しい方。比較的自由な生活を望む方。
プライバシーが確保され、外出や外泊も自由。必要なサービスを自分で選択できる。
介護度が重くなると、住み替えが必要になる場合がある。介護サービス費は別途契約が必要。
食事の提供や掃除・洗濯といった生活支援サービスが中心。サ高住よりスタッフが多く、レクリエーションが充実している施設も多いです。介護が必要な場合は、外部サービスを利用します。
身の回りのことは自分でできるが、家事の負担を減らし、アクティブに過ごしたい方。
施設主催のイベントが多く、他の入居者と交流しやすい。
介護サービスの利用が増えると、月額費用が高額になる可能性がある。
施設スタッフによる24時間体制の介護サービスが提供される、最も手厚いタイプの住まい。「特定施設入居者生活介護」の指定を受けており、介護度が上がっても住み続けられます。
手厚い介護が必要な方、将来の介護度が上がっても住み替えずに安心して暮らしたい方。
介護・看護体制が充実しており、看取りまで対応する施設も多い。
初期費用・月額費用ともに高額になる傾向がある。
社会福祉法人や地方自治体が運営する公的な施設で、比較的費用が安いのが魅力。「自立型」と、特定施設の指定を受けた「介護型」があります。
所得に不安があり、費用を抑えたい方。
自治体からの補助があるため、費用負担が軽い。
待機者が多い場合がある。所得制限が設けられていることがある。
認知症の高齢者が、5~9人の少人数ユニットで共同生活を送る施設。スタッフのサポートを受けながら、食事の準備や掃除などを分担し、家庭的な環境で穏やかに過ごします。
認知症の診断を受け、専門的なケアが必要な方。
環境の変化が少なく、認知症の症状緩和が期待できる。
原則として、施設がある市区町村の住民のみが入居対象。
自治体や社会福祉法人が運営する公的な介護施設。費用が安く、終身利用が可能なため非常に人気が高いです。
常時介護が必要(原則、要介護3以上)で、費用を抑えたい方。
月額費用が民間施設に比べて安い。看取りまで対応してくれる。
厚生労働省の調査(2022年)では約22.2万人が待機していると報告されており、入居は非常に困難です。
| 種類 | 入居条件(目安) | サービス内容 | 初期費用(目安) | 月額費用(目安) |
|---|---|---|---|---|
| サ高住 | 自立~要支援 | 安否確認、生活相談、生活支援(選択) | 0~数十万円 | 10~25万円 |
| 住宅型有料老人ホーム | 自立~要介護 | 食事、生活支援、レクリエーション | 0~数百万円 | 15~30万円 |
| 介護付有料老人ホーム | 自立~要介護 | 食事、生活支援、介護、看護、リハビリ | 0~数千万円 | 20~40万円 |
| ケアハウス | 自立~要介護 (施設による) | 食事、生活支援、介護(介護型のみ) | 0~数十万円 | 7~20万円 |
| グループホーム | 要支援2~/認知症 | 食事、生活支援、認知症ケア | 0~数十万円 | 15~25万円 |
| 特別養護老人ホーム | 原則 要介護3~ | 食事、生活支援、介護、看護、リハビリ | 0円 | 8~15万円 |
※上記費用はあくまで一般的な目安です。立地やサービス内容、居室の広さによって大きく異なります。
多くの選択肢があることは分かりましたが、では具体的にどうやって選べばよいのでしょうか。ここでは、最適な住まいを見つけるための3つのステップをご紹介します。
まず、本人や家族が「どのような暮らしを送りたいか」という希望を明確にすることが最も重要です。以下の4つの視点から、優先順位を整理してみましょう。
希望条件がある程度固まったら、それに合う施設を探します。やみくもに探すのではなく、信頼できる窓口に相談するのが近道です。
候補を2~3ヶ所に絞り込んだら、必ず本人と一緒に現地へ見学に行きましょう。資料だけではわからない「施設の空気感」を肌で感じることが大切です。
見学時チェックリスト
[ ] 入居者の表情は明るいか、穏やかか?
[ ] スタッフは笑顔で挨拶してくれるか? 入居者への言葉遣いは丁寧か?
[ ] 施設全体は清潔で、嫌な臭いはしないか?
[ ] 食事は美味しそうか?(可能なら試食を)
[ ] レクリエーションやイベントは楽しそうか? 参加は自由か?
[ ] 夜間のスタッフの人数は十分か?
[ ] 居室は十分な広さがあり、使いやすそうか?
[ ] 共用スペース(食堂、浴室など)は快適そうか?
[ ] 廊下や階段のバリアフリーは徹底されているか?
[ ] 契約内容や料金体系について、分かりやすく説明してくれるか?
[ ] 月額費用以外に、追加でかかる費用(おむつ代、理美容代など)は何か?
[ ] 退去しなければならないのは、どのような場合か?
最も多いお悩みです。無理強いは禁物です。「親のため」と決めつけず、まずは親の「住み慣れた家を離れたくない」という気持ちに寄り添いましょう。その上で、「もしもの時に備えて、一度見学だけでも行ってみない?」と、体験入居やショートステイを提案してみるのがおすすめです。施設の快適さや安心感を本人が実感することで、気持ちが変わることも少なくありません。
はい、多くの施設で対応可能です。夫婦で入居できる広めの居室を用意している有料老人ホームやサ高住は増えています。ただし、どちらか一方の介護度が高くなった場合の対応は施設によって異なるため、契約時にしっかり確認しておくことが重要です。
多くの施設で身元保証人が必要とされますが、いない場合でも諦める必要はありません。近年、身元保証を代行してくれる民間の保証会社と提携している施設が増えています。また、「成年後見制度」を利用することで入居できる場合もありますので、まずは施設側に相談してみましょう。
高齢者の住まい選びは、本人と家族の人生の質を大きく左右する、非常に重要な決断です。そして、その成功のカギは「情報」と「時間」にあります。
十分な情報収集と比較検討、そして本人と家族が納得いくまで話し合うためには、相応の時間が必要です。親が元気で、判断力もしっかりしている50代の今だからこそ、腰を据えて最適な準備を始めることができます。
まずはこの記事をきっかけに、ご家族と「これからの暮らし」について話し合ってみませんか。それは、親の安心のためであると同時に、いずれ訪れる自分自身の未来を考える、貴重な第一歩となるはずです。
※本記事の内容は、執筆時2025年9月のものです。最新情報は各機関や企業の公式サイトをご確認ください。
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