S&P500 CFDは、米国の大型企業500社の動きを示す株価指数S&P500を対象に、売買の差額だけを現金で決済する取引です。少ない資金で大きな金額の取引ができる一方、損失も同じ倍率で大きくなる可能性があります。
本記事では、ナスダック100・ダウとの違い、必要証拠金の計算例、米国市場の取引時間と為替の注意点を、最小取引単位の例を用いて確認していきます。
※本記事のS&P500の数値と為替レートは、仕組みを理解するための仮定値です。実際の数値は、取引前にご自身でご確認ください。
用語の整理
本記事を読み進めるにあたり、基本となる専門用語を整理しておきます。
- 差金決済:現物の受け渡しを行わず、売買の差額だけを現金でやり取りして決済する方法です。
- 証拠金:取引を行うために、担保として証券会社に預け入れる資金のことです。取引に最低限必要な証拠金を、必要証拠金と呼びます。
- レバレッジ:証拠金を担保にして、その何倍もの金額の取引を行える仕組みです。
- ポジション:買いまたは売りの注文が成立し、まだ決済していない保有中の取引のことです。
- 有効証拠金:口座に入金した金額に、保有中の取引の評価損益を加減した金額のことです。
- 証拠金維持率:必要証拠金に対する、有効証拠金の割合のことです。
- 追証とロスカット:追証は、証拠金が不足したときに、追加の証拠金の入金を求められることです。ロスカットは、損失の拡大を防ぐために、保有中の取引が強制的に決済されることです。
- 参照原資産:CFDの価格が連動する、元になる資産(現物の指数や先物など)のことです。
- 時価総額加重と株価平均型:時価総額加重は、時価総額(株価に発行済み株式数を掛けた企業の大きさを示す金額)が大きい銘柄ほど、指数への影響が大きくなる算出方式です。株価平均型は、株価が高い銘柄ほど、指数への影響が大きくなる算出方式です。
- 浮動株調整後の時価総額加重:時価総額加重のうち、市場で売買される株式(浮動株)だけをもとに、時価総額を計算する方式です。
- ドル円:1ドルを何円と交換できるかを示す為替レートです。
S&P500 CFDとは
S&P500とは
S&P500は、米国の大型企業500社を対象とする株価指数で、時価総額加重で算出されます。米国の大型株の動きを示す指標の一つです。
算出には、浮動株調整後の時価総額加重が使われます。
出典:S&P Dow Jones Indices「S&P 500」、「S&P U.S. Indices Methodology」
S&P500 CFDの仕組み
S&P500 CFDは、S&P500の価格をもとに、証券会社が提示する価格で売買し、決済時の差額だけを現金でやり取りする仕組みです。投資家は、対象となる米国の株式や株価指数そのものを現物として保有することはありません。
取引は、将来の価格上昇を見込んで買うだけでなく、価格下落を見込んで売りから入ることも可能です。ただし、売りポジションは、価格が上昇すると損失になります。
また、CFDの価格が連動する参照原資産(現物指数か先物か)は、証券会社により異なります。先物を参照する場合は、参照する先物が満期月を迎えて切り替わるときに、価格調整額という調整金が生じる場合があります。
ナスダック100・ダウとの違い
米国の主な株価指数には、S&P500のほかにナスダック100やダウがあります。それぞれの対象と算出方式の違いは以下の通りです。
| 指数 | 対象 | 算出方式 |
|---|---|---|
| S&P500 | 米国の大型企業500社 | 時価総額加重 |
| ナスダック100 | ナスダックに上場する、金融を除く大型企業100社 | 時価総額加重を一部修正した方式 |
| ダウ | 米国の主要な業種の大手30社 | 株価平均型 |
出典:S&P Dow Jones Indices「S&P 500」、Nasdaq「Understanding the Nasdaq-100 Index」、CME Group「E-mini Dow Product Overview」
指数ごとに構成する企業や算出方式が異なるため、日々の値動きは同じにならない場合があります。また、CFDで取り扱う指数は証券会社により異なります。
口座開設の流れ
S&P500 CFDを始めるための一般的な手順は、以下の4つのステップとなります。
- 取引する証券会社を決める
取り扱う指数、取引時間、必要証拠金率、調整額の扱いを、各社の案内で確認します。 - 口座開設を申し込む
証券会社のウェブサイトから申込み手続きを行い、本人確認を完了させます。 - 契約締結前交付書面を読む
証券会社が契約前に交付する、取引の仕組みやリスクを記した書面です。内容を確認します。 - 入金して取引を始める
必要証拠金に加えて、値動きに備えた資金を入金して発注します。入金額が必要証拠金に近いと、追証やロスカットの対象になりやすくなります。
口座開設全体の流れは、審査で見られる点、業者のタイプによる申し込みの違い、入金のしかたまで含めて、「CFD口座の開設方法|総合ネット証券とCFD専業業者の違いと申し込みの流れ」で解説しています。
必要証拠金と損益の計算例
実際の取引を想定し、以下の仮定値を用いて計算を行います。
計算に使う数値
- S&P500:7,800ポイント(仮定値)
- 1単位:S&P500の1倍(1ポイント=1ドル)。最小取引単位の一例
- ドル円:156円(仮定値)
- 必要証拠金率:10%(レバレッジ10倍と仮定)。実際の必要証拠金率は証券会社により異なります。
取引金額と必要証拠金の計算
上記の数値を用いて1単位を取引する場合の金額を計算します。
- 取引金額=7,800ポイント×1ドル×156円=1,216,800円
- 必要証拠金=1,216,800円÷10=121,680円
計算の結果、取引金額1,216,800円に対して必要証拠金は121,680円となります。S&P500はドル建ての指数のため、一般的に、この必要証拠金は為替レートによって変わります。

値動きによる損益の例
相場が変動した場合の損益と、証拠金への影響を確認します。
買いポジションを保有している状態で、S&P500が7,800ポイントから100ポイント(約1.3%)下落した場合、1単位の損失は100ドル(156円で15,600円)です。
口座に必要証拠金と同額の121,680円を入金していた場合、有効証拠金は106,080円(121,680円-15,600円)に減少し、有効証拠金が必要証拠金を下回る状態になります。このときの証拠金維持率は約87%(106,080円÷121,680円)となり、証券会社の基準によっては、追証やロスカットの対象になる場合があります。
追証やロスカットの仕組みは、「CFDの追証とロスカットとは?発生する水準と違いを計算例で解説」で解説しています。
取引時間と為替の注意点
S&P500 CFDの取引時間
S&P500 CFDは、米国の株式市場が閉まっている時間帯にも、取引できる場合があります。S&P500の先物の価格を参照するCFDが、その一例です。ただし、取引できる時間は証券会社や銘柄によって異なるため、実際の時間は、証券会社の案内で確認してください。
なお、S&P500を対象にした先物は、ほぼ24時間取引されています。
出典:CME Group「E-mini S&P 500 Overview」
一方で、S&P500の構成銘柄が取引される米国の株式市場には、決まった取引時間があります。ニューヨーク証券取引所の場合、通常取引は米国東部時間の9:30〜16:00で、土日祝日は休場です。
この時間を日本時間に直すと、米国が夏時間の間(毎年3月の第2日曜日から11月の第1日曜日まで)は22:30〜翌5:00、冬時間の間は23:30〜翌6:00となり、日本の夜から早朝に当たります。
出典:ニューヨーク証券取引所「Holidays & Trading Hours」、米国国立標準技術研究所(NIST)「Daylight Saving Time Rules」
為替レートの影響
S&P500はドル建ての指数のため、多くの場合、ドルで計算した損益を最終的に円に換算します。為替レートの影響を受ける点は、主に以下の2つです。
- 損益の円換算額
損益の円換算額:指数が100ポイント上昇して1単位が100ドルの利益になった場合、決済時のドル円が156円なら15,600円、148円なら14,800円です。 - 必要証拠金
必要証拠金:ドル円が156円から148円になると、取引金額は1,216,800円から1,154,400円に、必要証拠金は121,680円から115,440円に変わります。
このように、同じ値動きでも、為替レートによって、損益の円換算額と必要証拠金は異なります。

取引が再開したときの価格の飛び
週末や祝日、1日のうちの取引休止など、CFDの取引が止まっている間をはさむと、取引が再開したときに、価格が連続せず大きく飛ぶ(窓が開く)ことがあります。相場が急に動いたときも、同様です。
このような状況では、ロスカットが間に合わず、預け入れた証拠金を上回る損失が生じる可能性があります。
税金の扱い
国税庁は、取引所を通さず証券会社などを相手方として行う店頭デリバティブ取引のうち、一定のものについて、決済によって生じた所得を「先物取引に係る雑所得等」という区分にまとめています。この区分の所得は、給与所得などとは合算せず、別に税額を計算します。この方式を「申告分離課税」と呼びます。暗号資産に係る取引など、一部は対象外です。
出典:国税庁「No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例」
この区分の所得にかかる税率は、利益の額にかかわらず20.315%です。
※令和8年分までの内訳は、所得税15%、復興特別所得税0.315%(所得税額の2.1%)、住民税5%です。令和9年分以後は、復興特別所得税が所得税額の1.1%、防衛特別所得税が1%となり、内訳が変わりますが、合計の税率は変わりません。
出典:国税庁「No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例」
CFDは、この店頭デリバティブ取引の一つとして提供されるのが一般的です。ただし、国税庁の説明には「CFD」という語は出てきません。取引しているCFDが対象になるかは、証券会社の説明や税務署でご確認ください。
確定申告の手順は、「CFDの確定申告のやり方|必要書類・損益計算・申告分離課税を解説」で解説しています。
S&P500 CFDでよくある疑問
投資信託やETFとは何が違いますか
投資信託やETFは、S&P500に連動する運用を行う商品を、購入代金を支払って保有します。これに対しCFDは、証拠金を預けて差金決済で取引し、対象を現物として保有しません。
CFDの損益が「先物取引に係る雑所得等」の区分にあたる場合、株式や投資信託の譲渡所得など、この区分以外の所得とは損益通算できません。
出典:国税庁「No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例」
配当は受け取れますか
CFDは、指数の構成銘柄の株式を現物として保有しない取引のため、企業が支払う配当金そのものを受け取る取引ではありません。
ただし、配当に相当する配当調整額が、受取りまたは支払いとして生じる場合があります。有無、金額、受払いの向きは証券会社により異なります。詳しくは、「CFDの金利調整額とは?スワップポイントとの違いとマイナスになる仕組み」で解説しています。
ナスダック100やダウも同じように取引できますか
取り扱いの有無は証券会社により異なり、取り扱いがない場合もあります。
取引の仕組み自体はS&P500 CFDと共通していますが、指数ごとに構成する企業や算出方式が異なるため、実際の値動きは同じにならない場合があります。
【S&P500 CFDに関する補足事項】
S&P500 CFDは、証券会社によって、参照する原資産(先物または現物指数)、取引時間、必要証拠金率、調整額の扱いが異なります。S&P500は米ドル建てのため、為替レートの変動により、損益の円換算額や必要証拠金が変わります。取引時間外や相場急変時には、価格が大きく飛ぶ(窓が開く)ことがあり、ロスカットが間に合わず、預け入れた証拠金を上回る損失が生じる可能性があります。本記事の計算例は、仕組みを理解するための仮定値を用いた簡略化したものです。なお、本記事は一般的な仕組みを解説したものであり、特定の投資行動を推奨・勧誘するものではありません。当メディアおよびSIDE FPオフィスは、本記事の情報に基づいて行われた取引により生じた損失について、一切の責任を負いません。
まとめ
S&P500 CFDは、米国の大型企業の動きを示すS&P500を対象に、証拠金を預けて売買するCFDです。レバレッジが効くため、損失も大きくなる可能性があります。この記事の要点は、次のとおりです。
- S&P500 CFDは、S&P500を対象に差金決済で取引する。
- ナスダック100・ダウとは、対象の企業数と算出方式が異なる。
- 必要証拠金は、取引金額÷レバレッジ(本記事の例は、取引金額1,216,800円、必要証拠金121,680円)。
- 米国の株式市場が閉まっている時間帯にも取引できる場合があるが、取引時間は証券会社により異なる。
- ドル建ての指数のため、為替レートの変動で、損益の円換算額と必要証拠金が変わる。
- 国税庁は、一定の店頭デリバティブ取引の損益を、「先物取引に係る雑所得等」という区分にまとめている。取引しているCFDが対象かは、証券会社や税務署で確認する。
取引できる時間や必要証拠金率、調整額の扱いは、証券会社ごとに異なります。実際の条件は、証券会社が交付する契約締結前交付書面や取引ルールで確認する必要があります。
CFD取引に関する重要事項(リスク表示)
CFD取引は元本や利益が保証された取引ではありません。対象となる株価指数、商品、株式などの価格変動や、金利動向、為替変動により、差し入れた証拠金以上の損失が生じるおそれがあります。レバレッジ効果により、原資産の価格変動に比べて大きな利益を得られる可能性がある反面、多額の損失を被る危険性も有しています。お取引にあたっては、各証券会社が交付する契約締結前交付書面等を十分に読み、仕組みとリスクを深くご理解のうえ、ご自身の判断と責任においてお取引ください。


