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CFD(差金決済取引)などのレバレッジを効かせた金融商品において、投資家が最も注意しなければならないルールのひとつが「追証(おいしょう)」です。追証とは「追加証拠金」の略称であり、文字通り「証券会社から追加の資金入金を求められること」を意味します。
現物取引の場合、購入した株式や資産の価格がいくら下落しても、その価値がゼロになるだけで、追加で資金を請求されることはありません。しかし、証拠金を担保にして手元資金の何倍もの取引を行うCFDでは、相場が予想と反対の方向に大きく動いた場合、預け入れた証拠金以上の損失が発生してしまうリスクがあります。
このリスクを防ぐために、証券会社は日々、投資家の口座状況をチェックしています。そして、口座内の資金が一定の水準(証拠金維持率)を下回った際に、「このままでは損失が預け入れた証拠金の額を上回ってしまう危険性があるため、担保となる資金を追加で入金してください」と投資家に警告を出します。これが追証の仕組みです。
追証は、一見すると投資家にとって厳しいペナルティのように感じられるかもしれません。しかし本来は、投資家の損失が担保(証拠金)の範囲を大きく超えてしまい、借金を抱えるような事態を未然に防ぐための「安全装置」としての役割を担っています。CFD取引を始めるにあたっては、この追証が発生する基準や計算方法を正しく理解し、追証に陥らないための資金管理を徹底することが不可欠です。
追証が発生するかどうかは、「証拠金維持率」という指標によって判断されます。証拠金維持率とは、現在保有しているポジション(建玉)を維持するために最低限必要な資金(必要証拠金)に対して、口座内に実質的にいくらの資金(有効証拠金)が残っているかを示す割合のことです。
証拠金維持率の計算式は以下の通りです。
証拠金維持率(%) = 有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100
この計算式に出てくる2つの専門用語について、簡単に整理しておきましょう。
相場が予想と逆の方向に動き、含み損が膨らんでいくと、計算の分子である「有効証拠金」が減っていくため、証拠金維持率は低下していきます。
証拠金維持率が証券会社が定めた「一定の基準」を下回ったタイミングで、追証が発生します。
ここで注意が必要なのは、追証が発生する具体的な基準(証拠金維持率が何%を下回ると追証になるか)は、利用する証券会社ごとに異なるという点です。 一般的には、「証拠金維持率100%」を追証の発生基準(アラート水準)としている証券会社が多い傾向にあります。これはつまり、「口座の実質的な資金(有効証拠金)が、最低限必要な担保額(必要証拠金)を下回った状態」を意味します。
ただし、すべての業者がこの100%基準を採用しているわけではありません。証拠金維持率の判定時刻(毎日の取引終了時点など)や、不足額の計算方法、入金期限などの細かなルールは証券会社によって規定が異なります。取引を開始する前に、必ずご自身が利用する証券会社の取引ルール(契約締結前交付書面等)を確認してください。
なお、取引する銘柄によって異なる「必要証拠金」の具体的な計算方法やレバレッジの仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。 [リンク:CFDのレバレッジ規制とは?]
では、具体的に相場がどれくらい変動すると追証の基準に引っかかってしまうのでしょうか。頭の中でイメージするだけでなく、実際に数字を当てはめて計算してみることが重要です。
ここでは、別記事の[リンク:商品CFD(金)の始め方]で紹介した取引例を引き継ぎ、具体的な金額でシミュレーションを行ってみましょう。
【シミュレーションの前提条件】
※2026年9月時点のレート(金1トロイオンス=約4,300米ドル、1米ドル=約156円)を参考値として記載しています。
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上記の条件で、あなたは口座に700,000円を入金し、必要証拠金187,500円を使って、375万円分の金CFDの「買い」ポジションを持ちました。最初は十分な資金的余裕(証拠金維持率213%)があります。
上記の条件で、あなたは口座に700,000円を入金し、必要証拠金335,400円を使って、671万円分の金CFDの「買い」ポジションを持ちました。最初は十分な資金的余裕(証拠金維持率209%)があります。
しかしその後、金価格が下落し始めたとします。いくら含み損を抱えると、証拠金維持率が100%(つまり有効証拠金が必要証拠金と同じ335,400円)になるかを逆算します。
有効証拠金が364,600円減った(含み損が364,600円に達した)時点で、証拠金維持率は100%に到達し、追証が発生します。 では、この364,600円の含み損は、全体の取引金額(671万円)に対して何%の下落に相当するのでしょうか。
結論として、今回のケースでは金価格が買った時点から「約5.4%」下落すると、追証水準に達してしまうことになります。 70万円という、必要証拠金(約33.5万円)の2倍以上の余裕資金を入れていたとしても、原資産の価格がたった約5.4%下落するだけで追証のピンチを迎えるというのが、レバレッジ取引の資金効率の良さの裏に潜むリスクです。
※上記は為替変動を考慮せず、特定証券会社の「維持率100%基準」を仮定した簡略化された計算例です。実際の追証基準や計算方法は各社で異なります。
追証と似た言葉に「ロスカット(強制ロスカット)」があります。どちらも投資家の損失拡大を防ぐための安全装置ですが、両者には明確な違いがあります。どちらも投資家の損失拡大を防ぐための安全装置ですが、両者には以下のような明確な違いがあります。
| 比較項目 | 追証(追加証拠金) | ロスカット(強制ロスカット) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 証拠金の不足を警告し、追加担保を求める | 投資家の資金が完全にゼロ(マイナス)になるのを防ぐ |
| 猶予期間 | あり(指定期日までの入金・決済で回避可能) | なし(基準に達した瞬間に即座に実行される) |
| 判定のタイミング | 1日1回(毎日の取引終了時点など) | リアルタイム(取引時間中常に監視) |
| 発生する基準の例 | 証拠金維持率 100%割れなど | 証拠金維持率 50%割れなど ※追証より低い水準 |
最大の違いは「投資家が入金やポジション調整を行うための猶予期間があるかどうか」です。
追証は、毎日の取引終了時点など、証券会社が定めた特定の時刻に証拠金維持率の判定が行われます。そこで基準を下回っていた場合、投資家に「〇日〇時までに不足分の証拠金を入金するか、ポジションを一部決済して維持率を回復させてください」という通知が届きます。つまり、指定された期限までに対応すれば、ポジションを維持したまま取引を継続することが可能です。期限までに対応できなかった場合にのみ、強制決済が行われます。
一方のロスカットは、相場の急変時などに投資家の資金が完全に底をつくのを防ぐための最終手段です。取引時間中、リアルタイムで証拠金維持率が監視されており、証券会社が定めた「ロスカット基準」に達した瞬間に、投資家の意志に関係なく、有無を言わさずすべてのポジションが強制的に決済(損切り)されます。ロスカットが発動すると、その時点での損失が完全に確定してしまいます。
多くの証券会社では、追証とロスカットの基準を異なる水準に設定しています。 例えば、「証拠金維持率100%で追証判定、さらに下落して50%に達すると強制ロスカット」といった具合に、ロスカットの方がより低い(危険な)水準に設定されていることが一般的です。ただし、近年では「追証制度を廃止し、証拠金維持率100%を下回った瞬間に即ロスカットを発動する」というルールを採用している証券会社も増えています。利用する口座がどちらの方式を採用しているかは、必ず事前に把握しておきましょう。
追証やロスカットは、発生してから対処するのではなく、未然に防ぐ(回避する)ことがCFD取引における最大の鉄則です。安全に取引を継続するためには、以下の3つの対策を徹底してください。
最も確実な対策は、取引口座に多めの資金を入れておくことです。先ほどの計算シミュレーションの通り、必要証拠金ギリギリの資金しか入っていないと、相場がわずかに逆行しただけですぐに追証・ロスカットにかかってしまいます。口座の資金に対して取引数量を小さく抑える(実効レバレッジを低くする)ことで、証拠金維持率を高く保ち、多少の価格変動には耐えられる余裕を持ちましょう。証拠金維持率は常に300%〜500%以上をキープするよう心がけるのが一つの目安です。
新規でポジションを建てた際には、同時に必ず「逆指値注文(ストップロス注文)」を入れておくことを習慣づけましょう。これは「あらかじめ自分が許容できる損失額(価格)を決めておき、その価格に達したら自動的に決済させる」という注文方法です。追証や強制ロスカットの水準に達するよりもずっと手前の段階で、自らのルールに従って小さな傷(損切り)で撤退することが、長期的に資金を守ることに繋がります。
相場は予期せぬニュースや経済指標の発表によって急変動することがあります。特に、ポジションを翌日や週末に持ち越す(オーバーナイトする)場合は注意が必要です。スマートフォンアプリなどを活用し、現在の証拠金維持率がどの程度あるのか、危険な水準に近づいていないかをこまめにチェックする癖をつけましょう。
本記事では、CFD取引における追証の仕組みや、ロスカットとの違いについて解説しました。 要点は以下の通りです。
CFDは資金効率の良い取引ですが、それは徹底したリスク管理があってこそ活きるメリットです。ルールの仕組みを正しく恐れ、自らの資金を守る対策をしっかりと講じた上で取引に臨んでください。
その他のCFDに関する基礎知識や実践的な内容については、以下の記事もあわせてご確認ください。
CFD取引は元本や利益が保証された取引ではありません。対象となる株価指数、商品、株式などの価格変動や、金利動向、為替変動により、差し入れた証拠金以上の損失が生じるおそれがあります。レバレッジ効果により、原資産の価格変動に比べて大きな利益を得られる可能性がある反面、多額の損失を被る危険性も有しています。お取引にあたっては、各証券会社が交付する契約締結前交付書面等を十分に読み、仕組みとリスクを深くご理解のうえ、ご自身の判断と責任においてお取引ください。
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