CAMPAIGN
RANKING
CATEGORY
NEW
POPULAR

「ねんきん定期便に書かれた年金見込額を見て、ひと安心していませんか?」
毎年届くこの通知を見て、老後の生活設計を思い描く方は少なくないでしょう。しかし、その金額がまるまる銀行口座に振り込まれるわけではない、という事実をご存知でしょうか。
老後の生活設計の土台となる年金額。多くの人が、通知に記載された「額面」の金額で計画を立ててしまいがちです。実はこれこそが、豊かなセカンドライフを送る上での大きな「落とし穴」なのです。
給与と同じように、年金からも税金や社会保険料が天引きされます。その結果、実際に使える「手取り額」は、想定よりもずっと少なくなる可能性があります。
この記事では、「手取り額」で資金計画を立案することの重要性、年金から控除される費用の内訳、そして将来の資産形成をより確実なものにするための具体的な方策について、客観的な情報に基づき解説します。
まず、会社員時代の給与を思い出してみてください。「額面給与」から所得税や住民税、社会保険料が引かれ、実際に振り込まれるのは「手取り給与」でした。年金もこれと全く同じ構造なのです。
国から支給される年金の総額が「額面」、そこから様々なものが天引きされた後に、最終的に自分の口座に入金される金額が「手取り」となります。
なぜ、この「手取り額」がそれほどまでに重要なのでしょうか。それは、私たちの生活そのものが、手取り額を基準に成り立っているからです。日々の食費や光熱費、楽しみにしている趣味や友人との旅行、そして万が一の病気や介護に備える費用。これら全ての計画は、実際に自由に使える「手取り額」を元に立てなければ、あっという間に破綻してしまいます。
額面だけを見て「これくらいもらえるなら大丈夫だろう」と楽観視していると、いざ年金生活が始まった時に「こんなはずではなかった」と慌てることになりかねません。

では、具体的に私たちの年金からは何が引かれるのでしょうか。大きく分けて4つの項目があり、これらを理解することが第一歩となります。
まず一つ目は所得税・復興特別所得税です。年金は税法上「雑所得」として扱われ、課税の対象となります。もちろん、全額に税金がかかるわけではなく、「公的年金等控除」や全ての納税者に適用される「基礎控除」などを差し引いた後の金額に対して課税される仕組みです。特に2025年時点では、2024年に実施された定額減税が終了しているため、前年と同じ年金額でも税負担が増える可能性がある点には注意が必要です。
二つ目は住民税です。これも所得税と考え方は同じで、前年の所得を基準に課税されます。お住まいの自治体によって税率が若干異なる場合がありますが、年金収入が主な収入源となる方にとっては、決して無視できない負担となります。
三つ目は国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)です。会社員時代は給与から天引きされていた健康保険ですが、退職後は国民健康保険に切り替わる方が多いでしょう。そして75歳になると、全ての人が後期高齢者医療制度に移行します。これらの保険料も前年の所得に応じて決まるため、年金額が保険料の計算に直接影響します。
そして四つ目が介護保険料です。これは65歳以上の全ての人が支払う義務のある保険料で、原則として年金から天引きされます。介護が必要になった時にサービスを受けるための重要な保険ですが、これも所得に応じた負担が求められます。
言葉の説明だけでは、なかなかイメージが湧きにくいかもしれません。そこで、具体的なモデルケースを使って、実際に手取り額がいくらになるのかを試算してみましょう。
【モデルケース】
年齢・家族構成: 65歳・単身
居住地: 東京都区部
収入: 公的年金のみ
年金の額面月額:220,000円(年額 2,640,000円)
この条件で計算すると、天引きされる金額の概算は以下のようになります。
社会保険料(国民健康保険料・介護保険料)の概算: 約25,000円/月
税金(所得税・住民税)の概算: 約8,000円/月
つまり、額面で220,000円の年金を受け取る人の手取り月額の目安は、約187,000円となります。
額面よりも毎月33,000円、年間で計算するとなんと約400,000円も少なくなってしまうのです。この差額の大きさに、驚かれた方も多いのではないでしょうか。
※この計算はあくまで概算です。実際の金額は、お住まいの自治体や家族構成、その他所得の有無などによって変動します。
【年金額面別・手取り額 早見表】
| 額面月額 | 手取り月額(目安) | 手取り年額(目安) |
|---|---|---|
| 150,000円 | 約132,000円 | 約1,584,000円 |
| 200,000円 | 約173,000円 | 約2,076,000円 |
| 250,000円 | 約212,000円 | 約2,544,000円 |
| 300,000円 | 約250,000円 | 約3,000,000円 |
「引かれるのは仕方ない」と諦める必要はありません。制度を正しく理解し、今から準備をすれば、手取り額を賢く最大化することが可能です。ここでは3つの具体的な対策をご紹介します。
一つ目は、「非課税の財布」を育てることです。年金収入だけに頼るのではなく、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(小額投資非課税制度)を積極的に活用しましょう。これらの制度を使って得た運用益や、iDeCoの受け取り金(控除の範囲内)は非課税です。つまり、年金の手取り額に影響を与えることなく、まるごと自分のものになる「もう一つの収入源」を育てることができるのです。
二つ目は、「控除」をフル活用して課税対象額を減らすことです。年末調整や確定申告の際に、適用できる控除を漏れなく申告することが節税の基本です。例えば、生命保険料控除や地震保険料控除、年間の医療費が多くかかった場合の医療費控除などが挙げられます。特に、生計を同一にする配偶者や子ども、親などを扶養に入れる「扶養控除」は節税効果が大きいため、ご自身の家族状況を改めて確認してみましょう。
三つ目は、「働き方」を戦略的にデザインすることです。65歳以降も働く場合、会社員として厚生年金に加入し続けると、給与と年金の合計額によっては年金の一部または全額が支給停止になる「在職老齢年金」という仕組みがあります。一方で、個人事業主やフリーランスとして厚生年金に加入せずに働けば、この仕組みは適用されません。年金を全額受け取りながら、自分のペースで収入を得るという選択肢も、これからの時代には重要になってくるでしょう。
今回は、年金受給における「額面」と「手取り」の違いという、非常に重要ながら見過ごされがちなテーマを掘り下げてきました。
年金は「額面」ではなく、実際に自由に使える「手取り額」で生活設計を立てることが、豊かなセカンドライフを送るための絶対的な鉄則です。そして、年金からは所得税・住民税、社会保険料といった決して小さくない金額が引かれるという事実を、まずは受け止めなければなりません。
しかし、悲観する必要はありません。制度を正しく理解し、iDeCoやNISAといった非課税制度の活用、各種控除の漏れなき申告、そして自分に合った働き方の戦略的な選択といった対策を早めに講じることで、未来は大きく変わります。
まずは第一歩として、日本年金機構の「ねんきんネット」でご自身の正確な年金見込額を確認し、この記事を参考に「手取り額」がいくらになるのかを試算することから始めてみませんか?そこから、あなたの本当の老後資金計画がスタートするのです。
※本記事の内容は、執筆時2025年7月のものです。最新情報は各機関や企業の公式サイトをご確認ください。
この記事のリンクを経由して商品の購入やサービス申し込みをすると、売上の一部が当サイトに還元されることがあります。
当サイトに掲載する情報は、金融に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、金融商品の勧誘を目的としたものではありません。最終的な決定は、ご自身の判断で行うようお願いします。
当サイトに掲載する情報は、各金融機関等の提供している情報に基づいていますが、実際のサービス内容や取引手数料、銘柄などに関する最新情報は公式サイトにてご確認ください。
また、当サイトに掲載する情報について、万全を期していますが、その内容の正確性および安全性を保証するものではありません。当サイトおよびリンク先サイトの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切の責任を負いかねます。