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iDeCo(イデコ)は、加入者が自ら選んだ投資商品に毎月一定額を積立投資し、60歳以降に受け取ることができる個人向けの確定拠出年金制度です。掛金は所得控除の対象となり、節税効果が非常に魅力的です。
例えば、年収500万円の会社員が毎月1万円をiDeCoで積み立てた場合、年間2.4万円が節税できます(※1,2)。また、投資で得た利益も非課税となり節税効果が高いことから、加入者は2024年6月時点で約337万人と加入者範囲が拡大した2016年から約7.5倍に増加しています(※3)。
※1 積立時に節税できる所得税・住民税の金額
※2 所得税率10%・住民税率10%で試算
※3 厚生労働省の開示資料を参照
その一方で、60歳まで引き出せない、受取時の税金が複雑といった理由から、NISAと比べて利用をためらう方も多いのではないでしょうか?
しかし、2025年度にはiDeCoの制度改正が予定されており、拠出期間が70歳まで延長され、拠出額も増額される可能性があります。そうなれば、iDeCoを活用しなかった場合との差はさらに大きくなるかもしれません。
そこで、この記事では、iDeCoにおいて複雑な受け取り方、特に退職金がある場合の賢い節税術について詳しく解説します。
60歳以降のiDeCo受取時の税金の仕組み、退職金とiDeCoの受け取り時期のコントロール方法など、具体例を交えながら分かりやすく解説していきます。
iDeCoを詳しく知りたい人はこちら
iDeCoの最大の魅力は、なんといっても節税効果です。掛金が全額所得控除になるため、所得税と住民税を大きく減らすことができます。また、運用益は非課税、受け取り時の税制も有利になっています。
しかし、iDeCoには注意点もあります。60歳まで引き出せないこと、運用次第で元本割れのリスクがあること、受取時の税金が複雑なことなどです。
iDeCoの節税効果は、所得税率が高い人ほど大きくなります。年収500万円と年収700万円の場合を比較してみましょう。
会社員が毎月1万円をiDeCoで積み立てた場合
※1 積立時に節税できる所得税・住民税の金額
※2 所得税率10%・住民税率10%で試算
※3 所得税率20%・住民税率10%で試算
iDeCoは60歳から75歳までの間に、積み立てたお金を一時金、年金、またはその併用で受け取ることができます。一時金で受け取った場合は退職所得、年金で受け取った場合は雑所得となり、他の所得と合算して税金を計算します。
このように、受け取り方によって税金の計算方法が異なります。
どの受け取り方が有利かは一概には言えませんが、一般的に税金面だけを考えた場合は、一時金で受け取るのが有利になることが多いです。
一度にまとめて受け取る場合:「退職所得控除」が適用されます。例えば、30年間iDeCoに加入して2,000万円を受け取る場合、800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円までは非課税です。
勤続年数またはiDeCo加入年数※ | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数またはiDeCo加入年数※ (80万円に満たない場合は80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数またはiDeCo加入年数※-20年) |
※退職金とiDeCoを一時金として同じ年に受け取る場合、勤続年数とiDeCo加入年数のどちらか長い方で計算
※iDeCo加入年数は掛金を拠出した期間
分割で受け取る場合:「公的年金等控除」が適用され、受け取る金額に応じて控除が受けられます。
年齢 | 年金額 | 控除額 |
---|---|---|
65歳未満 | 130万円未満 | 60万円 |
65歳以上 | 330万円未満 | 110万円 |
※2025年の税制改正で変更となる可能性があります
退職金とiDeCoを同時に受け取る場合には、退職所得控除の計算に注意が必要です。勤続年数とiDeCoの加入年数(掛金を拠出した期間)の長い方が控除の計算に適用されます。
それでは、以下の場合にかかる税金を計算していきましょう。
前提条件:会社員(勤続30年)が退職金1,500万円と、iDeCo(加入年数20年)1,000万円を一時金で同時に受け取る場合
㋐退職所得
退職金1,500万円+iDeCo1,000万円=2,500万円
㋑退職所得控除
800万円+70万円×(勤続30年※-20年)=1,500万円
※勤続30年>加入年数20年のため30年を適用
㋒課税退職所得
(㋐退職所得2,500万円-㋑退職所得控除1,500万円)×1/2=500万円
㋓所得税
㋒課税退職所得500万円×所得税率20%※-控除額42万7,500円※=57万2,500円
※以下の所得税の税額表を参照
㋔復興特別所得税
㋓所得税57万2,500円×復興特別所得税率2.1%=1万2,022円(1円未満切り捨て)
㋕住民税
㋒課税退職所得500万円×住民税率10%=50万円
㋖納税額合計
㋓所得税57万2,500円+㋔復興特別所得税1万2,022円+㋕住民税50万円=108万4,522円
前提条件:会社員(勤続30年)が退職金1,000万円と、iDeCo(加入年数20年)500万円を一時金で同時に受け取る場合
㋐退職所得
退職金1,000万円+iDeCo500万円=1,500万円
㋑退職所得控除
800万円+70万円×(勤続30年※-20年)=1,500万円
※勤続30年>加入年数20年のため30年を適用
㋒課税退職所得
(㋐退職所得1,500万円-㋑退職所得控除1,500万円)×1/2=0円
課税退職所得が0円なので納税額は0円です。
所得税の税額表(納税額=A×B-C)
A. 課税退職所得金額 | B. 税率 | C. 控除額 |
---|---|---|
1,000円〜194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万円〜329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
330万円〜694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円〜899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円〜1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円〜3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円〜 | 45% | 479万6,000円 |
上記のパターン①では納税額108万4,522円となりましたが、iDeCoの受け取り時期をずらすことで、税金を大幅に減らせる可能性があります。
それが5年ルールや19年ルールと言われるものです。退職金とiDeCoの受け取り時期をずらすことで、退職所得控除をフル活用することができる仕組みです。
これらのルールは、退職金とiDeCoの金額、勤務年数、iDeCoの加入年数などによって適用できるかどうかが変わります。
上記のパターン①について、5年ルールを活用した場合を見ていきましょう。
前提条件:会社員(勤続30年)が、iDeCo(加入年数20年)1,000万円を一時金で受け取った後、5年後に退職金1,500万円を受け取る場合
㋐退職所得
iDeCo1,000万円
退職金1,500万円
㋑退職所得控除
iDeCo:40万円×加入年数20年=800万円
退職金:800万円+70万円×(勤続30年-20年)=1,500万円
㋒課税退職所得
iDeCo:(㋐退職所得1,000万円-㋑退職所得控除800万円)×1/2=100万円
退職金:(㋐退職所得1,500万円-㋑退職所得控除1,500万円)×1/2=0万円
㋓所得税
㋒課税退職所得100万円×所得税率5%※-控除額0円※=5万円
※上記の所得税の税額表を参照
㋔復興特別所得税
㋓所得税5万円×復興特別所得税率2.1%=1,050円
㋕住民税
㋒課税退職所得100万円×住民税率10%=10万円
㋖納税額合計
㋓所得税5万円+㋔復興特別所得税1,050円+㋕住民税10万円=15万1,050円
このように、5年ルールを使うことで同時に受け取った場合よりも納税額が93万3,472円も減らすことができました。
ですが、残念ながらこのルールに該当するケースはごく一部の限られた人だけとなっています。5年ルールを活用しようとすると、退職金を受け取る5年前にiDeCoを受け取る必要があります。しかし、iDeCoが受け取れるのは最短でも60歳からなので、必然的に退職金の受け取りを65歳にする必要があり、定年が65歳以降であることが条件になります。
また、19年代ルールを適用しようとすると、iDeCoを受け取る最長年齢が75歳なので、その20年前に退職金を受け取らなければならず、早期退職するようなケースが該当します。または、転職された人で、40歳で前職を退職する時に退職金を受け取り、その後iDeCoを60歳以降に受け取るようなケースです。
どちらにしても、60歳で退職金を受け取るような場合には活用することが難しくなります。
5年ルールや19年ルールを活用できない人は、退職金を受け取った後も、iDeCoの積み立てを継続することで、受取時の税金を抑えることができます。最低拠出額の5,000円でも拠出を続けることで、退職所得控除の年数に反映されるため、税負担を軽減できます。
それでは、上記パターン①に当てはめて見てみましょう。
前提条件:会社員(勤続30年)が退職金1,500万円を60歳で受け取った後、iDeCoの掛金 毎月5,000円を5年間継続して拠出し、1,030万円※を一時金で受け取る場合
※5年間の運用成績は考慮しません
※元々の1,000万円に毎月の掛金5,000円×12ヵ月×5年間=30万円を足した金額
㋐退職所得
退職金1,500万円
iDeCo1,030万円
㋑退職所得控除
退職金:800万円+70万円×(勤続30年-20年)=1,500万円
iDeCo:40万円×加入年数5年=200万円
㋒課税退職所得
退職金:(㋐退職所得1,500万円-㋑退職所得控除1,500万円)×1/2=0万円
iDeCo:(㋐退職所得1,030万円-㋑退職所得控除200万円)×1/2=415万円
㋓所得税
㋒課税退職所得415万円×所得税率20%※-控除額42万7,500円※=40万2,500円
※上記の所得税の税額表を参照
㋔復興特別所得税
㋓所得税40万2,500円×復興特別所得税率2.1%=8,452円(1円未満切り捨て)
㋕住民税
㋒課税退職所得415万円×住民税率10%=41万5,000円
㋖納税額合計
㋓所得税40万2,500万円+㋔復興特別所得税8,452円+㋕住民税41万5,000円=82万5,952円
退職金とiDeCoを同時に受け取った場合よりも納税額が25万8,570円減らすことができました。
所得税の累進税率の仕組みを活用し、受け取り時期を調整することで税率を下げることができます。
iDeCoの受け取り方には、一時金、年金、併用があり、税金面では一時金が有利な場合があります。退職金とiDeCoを同時に受け取る場合は、受け取り時期をずらすことで節税できる可能性があります。
5年ルールや19年ルールが適用できない場合は、退職後にiDeCoの受け取りをずらし、拠出も継続することで税負担を軽減できます。
iDeCoの受け取り方は複雑ですが、この記事を参考に、ご自身の状況に合わせて賢い選択をしてください。
iDeCo(イデコ)は、個人型の確定拠出年金制度です。加入者が毎月一定額を積み立て、60歳以降に年金または一時金として受け取ることができます。掛金は全額所得控除の対象となり、節税効果が大きな魅力です。
重要ポイント:
メリット:
デメリット:
iDeCoは、60歳以降に一時金、年金、またはその併用で受け取ることができます。一時金で受け取ると退職所得、年金で受け取ると雑所得として課税されます。一般的に、税金面では一時金で受け取る方が有利な場合が多いです。
重要ポイント:
退職金とiDeCoを同時に受け取ると、退職所得控除の計算に注意が必要です。勤続年数とiDeCoの加入年数のどちらか長い方が控除額の計算に適用されます。受け取り時期を調整することで、税負担を軽減できる場合があります。
重要ポイント:
退職金を受け取った後もiDeCoを継続することで、iDeCoの加入年数が長くなり、将来iDeCoを受け取る際の退職所得控除額を増やすことができます。結果として、税負担を軽減できる可能性があります。
※本記事の内容は、執筆時2024年8月のものです。最新情報は各機関や企業の公式サイトをご確認ください。
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